005でマンスリードナーの継続について調べているとき、M+R Benchmarksという資料にたどり着きました。

最初に知りたかったのは、デジタルで寄付を募るときの「基準」のようなものでした。

広告の数字は、どのくらいならいいのか。

寄付につながる割合は、どのくらいなのか。

非営利団体では、どんな指標を見ているのか。

前職でも広告やアクセス解析の数字を見ることはありましたが、非営利団体で寄付を募るようになってから、

「この数字は、いいのか悪いのか」

を判断する基準が自分にはありませんでした。

そこで、M+R Benchmarks 2026を読んでみることにしました。

M+R Benchmarksとは?

M+R Benchmarksは、アメリカを中心とした非営利団体のファンドレイジングやデジタル活動について、毎年実績を集計しているベンチマーク調査です。

2026年版には180団体が参加していて、Fundraising、Advertising、Website、Email、Social Mediaなど、複数の領域についてデータを見ることができます。

国際支援、飢餓・貧困、環境、保健など、活動分野別の数字が掲載されているものもあります。

ただし、ここに載っている数字は「非営利団体なら、この数字を目指せばいい」という正解ではありません。

参加している団体の規模や活動分野も違いますし、日本とは寄付文化や広告市場などの環境も違います。

さらにM+R自身も、今年の結果を過去のBenchmarksと単純に比較しないよう注意しています。参加団体は毎年同じではなく、指標の計算方法が変更される場合もあるためです。

また、M+R Benchmarksで「average」として紹介されている数字は、原則として各指標について回答した参加団体の中央値です。

そのため、数字そのものを目標にするのではなく、

「ほかの非営利団体は、何を測っているんだろう?」

という視点で読んでみることにしました。

最初は「平均値を見るもの」だと思っていた

読み始めたときは、

「寄付のCVRはどのくらい?」

「広告にはどのくらい投資している?」

「メールからどのくらい寄付につながる?」

といった、自分たちの数字と比較できる基準を探していました。

実際、M+R Benchmarksにはたくさんの数字が載っています。

でも、読んでいて面白いと思ったのは、数字そのものよりも、

「非営利団体が何を指標として見ているのか」

でした。

たとえば、メール。

開封率やクリック率を見ることは想像していました。

でもM+Rでは、

ファンドレイジングメールを1,000通送ったとき、いくら寄付につながったか

という数字まで見ています。

2025年は、1,000通のファンドレイジングメールあたり54ドルの寄付につながっていました。

「メールを見る」というだけでも、配信数、クリック、寄付と、見ることのできる数字はいくつもあります。

何を測るかによって、見えてくるものも変わるのだと思いました。

自分の仕事に近い5つの領域を見てみた

M+R Benchmarksにはたくさんのデータがあります。

今回は、その中でも今の自分の仕事に近い5つを見てみました。

Fundraising

2025年、マンスリー寄付による収益はオンライン収益全体の27%を占めていました。

団体規模によっても違いがあり、小規模な団体では22%、オンライン収益が年間1,000万ドルを超える大規模な団体では37%でした。

005でマンスリードナーについて調べていたとき、私は「新規は何人」「離脱は何人」という数字を出そうとしていました。

でもM+Rでは、マンスリードナーが寄付を始めてから何か月後まで継続しているかも追っています。

ここで、人数だけではなく、

「獲得した人が、その後も続けているかを見る」

という視点も必要だったと気づきました。

Advertising

2025年、参加団体のデジタル広告費は前年比18%増えていました。

M+Rでは、広告の目的によって見る指標も分けています。

ファンドレイジング広告ではROAS、リード獲得ではCPLなどです。

私は寄付訴求の広告を見ているとき、

「どのくらいのROASならよいのだろう」

と悩むことがあります。

寄付は一度で終わるとは限りません。

マンスリー寄付なら、その後も続く可能性があります。

そのため、広告費に対してその場で得られた寄付額だけを見て、単純に分岐点を決めるのが難しいと感じています。

M+Rの数字をそのまま目標にすることはできませんが、他の非営利団体が広告をどのような指標で見ているのかは参考になりそうです。

Website

Webサイトについても、アクセス数だけではありませんでした。

2025年は、Webサイト訪問者の1.6%が寄付をし、訪問者1人あたり1.33ドルの収益につながっていました。

Webサイトを見るとき、私はGA4でアクセス数や流入元を見ることがあります。

寄付LPなら、その先に寄付フォームがあります。

そう考えると、

「どのくらい見られたか」だけではなく、「その訪問が寄付にどうつながったか」

まで見ることができます。

Email

個人的に意外だったのがメールです。

M+Rではクリック率や寄付率だけではなく、

1,000通のファンドレイジングメールあたり、いくら寄付につながったか

まで指標にしていました。

一方で、これは日本の団体とそのまま比較してよいのか、まだ分かりません。

自分が見ているメールでは寄付につながっていても、ほかの日本の非営利団体でも同じ傾向なのか。

メールへの反応や寄付行動には、国による違いもありそうです。

海外の数字を「基準値」としてそのまま使うのではなく、自分たち自身の数字を継続して見る方が重要なのだと思います。

Social Media

SNSについては、フォロワー数やその増減だけではなく、インフルエンサー施策をファンドレイジングやアドボカシーなど、どんな目的で活用しているかも調査しています。

ここでも、

「フォロワーが何人いるか」

だけではなく、

「何のためにSNSを使っているのか」

によって見る数字が変わることが分かりました。

5つを見ていたら、全部Fundraisingにつながって見えてきた

最初は、

Advertising

Website

Email

Social Media

Fundraising

と、それぞれ別の領域だと思っていました。

仕事でも、

GA4を見る。

広告レポートを見る。

CRMを見る。

と、ツールごとに数字を確認することが多くあります。

でもM+Rを読んでいるうちに、自分の中では少し見え方が変わりました。

Fundraisingの中に、AdvertisingもWebsiteもEmailもSocial Mediaもある。

もちろん、広告やSNSには寄付以外の目的もあります。

それでも、寄付を募るデジタル施策について考えるとき、それぞれを別々の数字として見るだけではなく、

広告で知ってもらう。

Webサイトを訪れる。

寄付をする。

マンスリードナーになる。

その後も支援を続ける。

というように、その先で何が起きたのかまで見ていくことができます。

「GA4の数字」「広告の数字」「CRMの数字」と考えるのではなく、

何を目的にして、その後どんな行動につながったのか。

そこから見る数字を考えた方がよさそうです。

ベンチマークの数字は、その年の状況でも変わる

もう一つ印象に残ったことがあります。

M+R Benchmarks 2026では、連邦政府から資金を受けている参加団体の3分の2が、2025年に前年よりその資金が減ったと回答しています。

一方で、2025年のオンライン収益は全体で増加しました。

特にHunger/PovertyやPublic Mediaでは、オンライン収益が前年比37%増えていました。

M+Rでは、支援者が大切にしている活動やコミュニティが脅威にさらされたとき、寄付という形で反応したことが背景にあると分析しています。

これを読んで、

ベンチマークの数字も、その年に何が起きたかと切り離して見ることはできない

と思いました。

「この団体の寄付が○%増えた」という数字だけを見ても、その背景に災害や社会状況、資金環境の変化があるかもしれません。

だからこそ、海外の数字をそのまま自分たちの目標値にするのは難しそうです。

数字そのものより「何を測っているか」を見てみる

M+R Benchmarksを読み始めたときは、

非営利団体のデジタル施策の「基準値」を知りたい

と思っていました。

もちろん、比較できる数字が見つかったことも参考になりました。

でも、読んだあとに一番残ったのは、

「自分たちは何を測っているだろう?」

という問いでした。

広告なら、クリックやその場の寄付だけで終わっていないか。

Webなら、PVだけを見ていないか。

メールなら、配信数やクリックだけで終わっていないか。

マンスリードナーなら、新規獲得数だけを見ていないか。

M+Rを読んだからといって、いきなりすべての指標を管理できるわけではありません。

まずは、自分が今扱っている施策について、

「何を測れば、その次の判断につながるのか」

を考えるところから始めてみようと思います。

参考